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燕岳・大天井岳

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 9月22日から25日まで、わがM先輩の遠大な計画に便乗させていただき表銀座の一部を歩いてきた。山をやっている者一度や二度は合戦尾根を登っていて不思議はないが、不肖私は初体験。音に聞くあの槍ヶ岳をどうしても見たかった。近頃の私は、およそ世のしがらみにがんじがらめにされ日常から解放されることなど到底叶う筈もないが、どうした訳か、鬱勃と湧き起こる山への欲求が堰を切ったように抑えきれず何もかも振り切って出かけたのだった。北アルプスは四・五年ぶり、しかも、名にし負う三大急登の一つである。当然のごとく青息吐息の連続で、M氏の適切な指導がなかったら、大天井(おてんしょう)ヒュッテを往復することなど無理な話よ、といまさらながらに思う。槍ヶ岳は湧き上がるガスの中に、その高邁な姿を隠していてなかなかに姿を現さなかった。長野側からもうもうと吹き上がるガスはついに絶えることがなかったのである。私はフルサイズのデジタルカメラに24mm-105mmの標準ズームと70mm-300mmの望遠ズーム、約3.5kgの三脚とハーフNDフィルターなど最低限の機材を上下2気室のカメラ用ザックに詰め込んでいた。案の定、急登の最後には足が吊って死にたいくらい辛かった。ザマァ見ろ!それで青息吐息なら知ったことか!自業自得というものさ!連休最後の日とあって、下りてくる登山者は引きも切らず、恐ろしいほどの人気の高さを思い知らされもした。燕山荘を過ぎ、表銀座の展望のつれづれは、肝心の槍ヶ岳が容易に微笑みを投げかけてはくれなかった。 しかし、下山する日の朝、いつまでももそもそと燕山荘の玄関で身繕いをしていると、「クニマスさん!見えているぞ!」と 、Mさんの高い声がして急ぎ出てみると、槍ヶ岳は、それまでとは打って変わり、朝の清澄な空気の中に全容をすっきりと見せて高かった。手前から深く切れ落ちる天井沢と千丈沢の間から急速に競りあがり、蛾々たる北鎌尾根を従えて上昇し、さらに天を衝くような先鋒を突き立てている。二つの沢はまだ暗い。初秋の空はこれまでになく青く透明だった。
 写真はほぼ時間の経過と共に並べた。(クニマス記)


 
   
燕山荘休憩所から燕岳西面。左下から吹き上がるガス 9/23 10:06  東面は時おり陽が射した。                 10:28  
   
 私は、「燕山荘に泊まりてぇ、もう電池が切れたぁ」と弱音を吐いたが・・・                              10:36  遠ざかる燕山荘   手前はイルカ岩だろうか       10:36 
   
 むしろ、この方が絵になるかなぁ  雲の切れ間の一瞬    10:50  大下りの頭で 裏銀座は雲の中              11:19
   
 RAWから現像すると派手な色合いになるが、実際はそうでもない
 色合いを控えめにしてみた                 11:30
 大下りの頭を下り、鞍部で見つけたナナカマドの紅葉  11:30
   
 大天井岳か?                          12:41   岳樺の黄葉が輝く                   12:41
   
 切通し岩下で一本を取るMさん              13:01    先輩が向いている方の岩に喜作レリーフ         13:01           
クニマスがよたよたと… Mさんが撮った     9/23 13:25 美しい! これもMさんによる。            9/24 7:56  
   
午後2時過ぎ 西穂岩稜が青く霞む             14:08 大天井ヒュッテへと下るMさん。私はとうとうノビて座り込んでしまった。小屋の上に見えるハシゴは牛首展望台への登り口    14:08
   
牛首展望台からの槍の夕景(左下に辛うじて穂先が。待っても天候の好転は望めなかった)。小屋の夕食を5時に済まし、展望台の急登を這い上がった。疲労の極。下って小屋で酒も飲まず、獣の眠りを眠った               9/23 17:16   前夜、「オレもクニマスさんと一緒に燕山荘に戻ることにする」と、 見かねたMさんは折角の自分の計画を放擲した。この日も濃い霧だった。燕山荘に戻る途中大天荘に寄った                 9/24 7:13         
  露置くナナカマド 前日の紅葉と同じ場所ですが    8:32  緑の背景が辛うじて赤色の平坦さを救うだろうか        8:31
   
構図を変えて                          8:58 コバイケイソウに秋が来て 空に見えるのは霧で谷下である 9:00
   
雲が取れてきた!これぞ表銀座の醍醐味 左 笠から続く連嶺        9:40頃 水晶は雲の中 大下りの頭で長い一本を取り パノラマ写真に仕立ててみた                               9:40頃
   
 槍は近い   70ミリ域                      9:36   わがままを言って300ミリのズームに付け替えた これで一杯だ    9:39
   
 山ひだに光射して                         9:52  先ほどのナナカマドが                      9:53 
   
 ガスが晴れてきた                        10:50   右が北鎌尾根 左が東鎌尾根 顔は隠してこそ…    10:02
 
 お昼ごろには燕山荘に到着 燕岳はまだガスの中だった   15:58  西の斜面は時おりガスが晴れて 逆光に岳樺が輝く     16:10
 
 その日も雲が多く夕陽に輝くことはなかった それにしても なかなかに劇的ではないか                      16:52  日は暮れた                         9/24 16:48 
 
翌朝 朝焼けも雲の中だった               9/25 5:11 15分後 燕岳に陽が当たった                    5:26 
    
玄関でもそもそしていると「クニマスさん見えてるぞ!」とM氏が声をあげた  陽が当たっているのが北鎌 右は西鎌尾根だろうか   6:22 槍ヶ岳に登ったのは10年も前、5月の雪山だった。3畳あまりの頂上で一息ついていると、不意に北鎌の崖から這い上がってきたクライマーに吃驚させられたことがある。「北鎌をやってきたのですか?」と声をかけると、「そう。」クライマーはそっけなく応え、何事もなかったかのように下山して行った。ガチャ(登攀用具)の音だけが耳に残った。      6:24
   
どこかのカメラマンが   Mさん撮影        9/24 9:00    Mさん撮影  コンパクトカメラでこれだけ写る 多少はレタッチさせていただいたが                       9/25  6:57
 後記
 
大人M氏の本来のコースは、大天井ヒュッテで私と別れ、単独喜作新道・西岳を経て、東鎌尾根から槍ヶ岳に至り、大喰(おおばみ)、中岳、南岳を経て天狗原に下り、天狗池に写る逆さ槍の水を汲み、水俣乗越(みずまたのっこし)を這い上がり、再び大天井ヒュッテに戻って中房温泉(なかぶさおんせん)に下るという実に壮大な計画だった。が、私があまりにだらしなかったので大天井ヒュッテから一緒に戻ってくれたのでした。負け惜しみで言おう!ああ山は良い!山仲間はまた良きかな!


コースタイム
9月22日14:00八王子西IC ⇒(中央道) 安曇野IC ⇒ 中房温泉駐車場車内泊
9月23日5:50 → 6:20第1ベンチ6:30 → 6:50第2ベンチ7:10 → 7:30第3ベンチ7:40 → 8:00富士見ベンチ8:15 → 8:50合戦小屋9:15 → 9:20休憩9:35 → 10:00燕山荘10:20 → 12:00大下り鞍部12:25 → 13:30切り通し下13:45 → 14:45大天井ヒュッテ泊
9月24日6:45 → 7:40大天荘7:55 → 8:20切通し岩8:35 → 10:00大下りの頭10:30 → 12:00燕山荘泊
9月25日7:00 → 8:00富士見ベンチ8:15 → 8:50第1ベンチ9:10 → 9:30中房温泉下駐車場 ⇒ 八王子

概算費用
ガソリン約30リットル(ハイブリッド車)4600円、 高速代4450円×2=8900円、宿泊費約2万円